2010年02月26日

旅の記憶---------

旅の記憶は今回で最終回、最後は「皆既日食」です。
皆既日食では、あまり写真が撮れなかったので、字ばっかりですみません(^^;



その日は朝から雨でした。
酷い雨音で目が覚めたくらいです…「天気予報の通りになっちゃったなぁ」と思いつつも、まだ皆既日食を諦めてはいませんでした。

前日下見をしたポイントへ行くかどうか、朝から迷っていました。
屋久島は今回の皆既日食の北限に近く、北側は2分弱、南側は4分ほど、と場所によって皆既の時間が随分違っていました。
前日に下見をしに行ったのは島の南側、尾の間という一番皆既時間の長い場所から直ぐ近く、南側に海を望める見晴らしの良い場所でした。
皆既日食の間に南の星を見たいと思っていたので、そこを候補にしていました。

風も強く、雨は降ったり止んだり…フェリー乗り場に行くと、屋久島から種子島方面へフェリーで出て、少しでも晴れ間を探そうという人たちが列を作っていました。
その人たちを横目に、雨が止んだのを見計らって、近くのバス停に並びました。
一番乗りです。
ここのバス停には、屋久島を反時計回りに回る「永田ゆき」と時計回りに回る「大川(おおこ)の滝ゆき」が並んであり、尾の間は「大川の滝ゆき」の途中にあります。
迷いつつも、時計回りの「大川の滝ゆき」のバス停に並びます。

バス停から南の空を眺めると、山の向こうから物凄い勢いで雲が流れて落ちてくるのが見えます。東側は雲に覆われて暗くなっています。西側(永田方面)は雲はありますが、空が少し明るくなっています。
直感が「永田ゆきに乗るべきだ」とちりを揺さぶります。しかし、永田の皆既時間は一番短かく、統計的には屋久島中で比較的雨の多い場所でもあるのです。
迷っている間に、「大川の滝ゆき」のバスを待つ列はドンドン長くなりました。

バスが来る直前まで迷っていました。
そして、永田から来る時計回りのバスに人が沢山乗っているのを見て、尾の間に行くと決心し、乗り込みました。
バスが進む間も、ずっと迷っていました。
少しでも晴れ間の在る場所に来たら降りるつもりでしたが、尾の間まで来てしまいました。
雨は益々強くなって、嵐のように横殴りになっています。

尾の間には既に、大勢の人が集まっていました。
場所移動して晴れ間を見つけようと、バス停に待っている人もいます。
空には灰色の分厚い雲がうねっていて、風も強く吹き飛ばされそうです。
時々雲の薄くなった場所から太陽の影が見えますが、直ぐに居なくなってしまいます。
日食は既に始まっている時間です。
しかし、その様子を見る事は出来なさそうです。



近くの喫茶店でお茶を飲みながら皆既日食直前まで待ち、時間を見て外に出ました。
太陽の位置も全く解らない、雲の支配した空をみんなが不安そうに見上げています。
皆既日食が近付くに連れ風は強くなる一方で、傘をさし続ける事はもはや不可能です。

雨が小降りになり、Tちゃんがビデオを撮り始めました。
ドキドキ、ザワザワしながら、その時を待ちます。
本来太陽があるであろう場所の空を二人で見ていましたが(多分そこに居た誰もが)、ふと南西の空に目をやると、丸くて大きな黒い影が、海の彼方から半円状にこちらに伸びてきているのが見えました。
「わっ、なに?!あの影!!」
思わず声を出すと、周り人たちがそちらの方角に目を向けました。
月の影なのでしょうか?ドンドン近付いてくるようで、なんとも言えない恐ろしさを覚えます。

体がザワザワを通り越して、もうガタガタしています。
こんな気持ちは初めてです。
子供の頃、言う事を聞かなくて物置に閉じ込められた時の感じと良く似ていますが、それ以上に自分の無力さと脱力感を感じます。
隣のTちゃんが、とても恋しく心強く感じます。
「怖い!怖い!」
そう言いながら写真を撮っている間に、徐々に暗くなり、その時は訪れました。

誰かが、車のクラクションを鳴らして、歓声を上げます。
皆既日食です。
真っ暗です。
夜です。
近くのホテルが照明を点しました。
隣のTちゃんの顔も見えません。
真っ黒い雲が、物凄い速さで流れていきます。
だけど、今太陽がどうなっているか、全然解りません。

あっと言う間に4分の皆既日食が終わりました。
さ〜っと辺りが明るくなり、今更のように嵐が勢力を弱めます。
雨も止んで、風も収まってきます。
「皆既日食が嵐と共に来たね」
と、ホッと一息するも、Tちゃんは太陽の姿が見えなかった事を、しきりに悔しがります。
ちりもとても残念な気持ちがありましたが、逆に驚くほどの満足感も同時に持っていました。

勿論ダイヤモンドリングなどを見られていたら、感動も一入だったと思います。
しかし、目隠しされた状態での皆既日食は、大変貴重なものでした。
今、この世界がどうなっているのか?何が起きたのか?今ほど科学的に発展していなかった時代に皆既日食に出会った人々の気持ちが、少し解った様な気がしました。
宇宙の営みに対し畏敬の念を抱き、ピラミッドやその他、太陽信仰の素晴らしい宗教的建築物を残した人々の気持ちが、こういう体験から起こったのだろうと、後に冷静になって想い至りました。



何故でしょうね。
この旅は、ちりを随分変えてしまいました。
「落ち着いた」と旅の後で友達に言われましたが、それは自分でもハッキリと解っていました。
絵にも心境の変化が、顕著に出てしまいました。
年賀状用の寅の絵です。
みなさん口々に「優しいトラ」「落ち着いてる」と言って下さいました。



数日後の朝、温泉に入りにホテルに行ったのですが、そこで「永田地区では、一瞬ダイヤモンドリングが見えた」と仰っている方がいました。
その時ばかりは、直感を信じなかった自分を罵りました。。。(T_T)ちりのバカ〜!!
そして、Tちゃんょ…ごめん(>_<;)

後で、Tちゃんが撮ったビデオを見ましたが、ちりが「怖い怖い」と叫んでいてウルサイ(笑)2人とも、かな〜りテンパってました。あっと言う間だと想っていた皆既日食は、後から見ると意外と長かったです。

良い写真をお見せ出来ないのが、とっても残念です。

nisshoku1.JPG
nisshoku3.JPG


皆既日食直前の南西の空(月の影?)     −−−−−−→    皆既日食、真っ只中


nisshoku4.JPG
nisshoku5.JPG



皆既日食中の椰子の木(北の空が夕焼け) −−−−−→    皆既日食後の椰子の木


今では、どれも良い思い出…
具体的な目標を持つことを嫌うちりにとって、唯一形の在る「夢・目標」が、これにて一件落着してしまいました。
今になって、少し燃え尽き症候群みたいになっていたりして(^^;>
だけど、もっと世界の不思議を体験してみたいな〜!!という気持ちは、今も在ります。

因みに、屋久島の名誉の為(?)に言っておきますが…屋久島では7月は殆ど雨は降らないそうです。現地の方も驚く異常気象で、皆既日食以降もその週はずっと雨だったのです。
お陰で白谷雲水峡では素晴らしく色良い苔を拝めましたので、結果オーライ?(^^;



旅の記憶は、これでお仕舞いです。
筆不精なちりにお付き合い頂いて、長い期間に亘って読んで下さった皆様、ありがとうございました。

そして、この旅でお世話になった沢山の方々に、とても感謝しています。
ずっと旅に付き合ってくれたTちゃん…色々協力してくれてありがとう!!!2人で行けて良かった!
居候させて頂いた、屋久島のおじさん…野菜いっぱい食べて元気になりました〜ありがとうございます!!!
車を貸して頂いたおばあちゃん、海や川に連れて行って下さったおじさん、宮古島の宿屋のご主人、屋久島の宿屋のおじさん、宿屋で一緒に飲んだお客さん、パスタ屋のおじさん、宮古馬牧場のおじさん、途中で2人の写真を撮って下さった方々、体調が悪い時に声をかけて下さったスチュワーデスさん、みんなみんな、感謝しています。
最後に、自由気ままなちりを気兼ねなく旅に行かせてくれた、大切な家族…ありがとう。ありがとう。ありがとう…ごめんね。
posted by ちり at 19:50| Comment(2) | 旅の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちりさん

「旅の記憶」を読み進んでいると、知らぬ間にあたかもその場に<立っている>自分がいました。見知らぬ場所ばかりで、驚きと好奇心と、「自分も行ってみたい!」という気持ちが一緒に、うずうず渦巻きましたよ。体験した具体的な記憶の他に、ちりさんが得たエモーションや様々な感覚はきっと膨大で、とてもそれを言い尽くせないのでしょうね。でも、こぼれるように出てきた旅のディテールは、自分には未知の事象や感覚を新たに開いてくれました。ありがとう。
屋久島の皆既日食は「雨で見えなかった」という一言で到底括れない、様々な出来事が起こっていて、それを体験した人たちがいたのですね。最終回の記述はまさにドキュメンタリーみたいで、こちらまでドキドキしました。同時刻、自分が住んでいる東海地方は曇りではっきりとは確認できなかったものの、蝕最大時には急に空気が冷たくなり、この急激な変化に、気持ちがざわつきました。
今回の旅の記憶が、別の形となって作品に現われてくるかもしれませんね。楽しみにしています。
Posted by りこ at 2010年02月28日 11:47
−−−−−
りこさん
−−−−−
記憶は書き換えられます。
時間と共に…
だけど、この時の記憶はかなり強烈だったので、細かい所はさて置き、今でも鮮明に思い出します。

感覚や気持ちや…そういった事は、きっと随分変わってしまっていると思います。
想い出す事は出来ますが、あの時とは違う自分が、それを冷静に分析してしまうから。。。

皆既日食は出来れば是非、実際に体験して貰いたいです。
ちりも数年前、地元で部分日食を見ましたが(今回の日食ほど騒がれていなかったのでかなり冷静な気持ちで見ていましたが)、皆既日食はその時とは比べ物になりませんでした。

今は冷静な自分でいるから、皆既日食の様子をきちんと伝える事が出来ましたが、直後にこれを書いていたら、きっと超興奮状態で意味不明な事もいっぱい書いていただろうな〜なんて思います(笑)

それはそれで、良かったのかも知れませんけれど(^^
−−−−−
Posted by ちり at 2010年02月28日 16:20
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